駆動系については、出力UP対応の補強が必要と判断。設計検討として、フロントは4ピニオン化(衝撃強度UP) / リヤはハイポイドギヤのサイズUPで疲労寿命向上が必要と結論を出した。ラリーチームは、当方案導入を認めてくれた。
しかし、所属設計は、量産開発が忙しく、先輩達は手を貸してくれず。やむなく、部品計画から図面作成・試作手配まで、一人で遂行すること、担当している量産開発設計は最優先することを条件で、上司からの認可をもらった。
細々と時間を工面(実際は残業で工面)して評価用の試作品まで作り上げた。運が良かったのは、トラック部門で量産しているハイポイドギヤとデフケース(内蔵デフギヤ・ピニオン)を流用することで新規開発の部品数を抑える計画が成立したこと。我ながら、あっぱれであった!

BEV用デフアセンブリ
リングギヤの歯が疲労破壊で破断
高トルク低サイクル疲労試験でBEVリングギヤの1個の歯が折れた
フランス南部のワイン用ブドウ畑

新たな問題には布石がある

問題解決には情報収集が肝である

得られた情報から、原因を推測する

直観的に、前後デフ比が違って搭載されているのではないか?と考えた。フロントデフの歯車数とリヤデフの歯車数を数えると、見事に違っていた。
試作の組み立てミスであった。人為的に閉ループ動力循環状態で長距離実車走行をしていた。この問題に取り組んだ事が、『ワインセラーのブドウ畑事件』の原因を容易に突き止める経験値となった。損失は大きいが、『現象には必ず原因があり、それを解決することでノウハウが蓄積される。』 自分は、『駆動系屋』という響きが大好きである。 少し前にディベート好きな輩が、『政治屋と政治家』を揶揄していた。現象と実践を大切にする技術屋は、『』よりも『』がしっくりくると当方は信じて疑わない。

極悪路走行中のパジェロ
フロントデフハウジング下面