駆動系試験は、公道でのフィーリング走行が大切である…
連日の試験場での計測と考察、そして、改良と効果の走行確認、さらに、計測し定量評価する。 ルーチンワーキングのようではあるが、頭で考えている時間が果てしなく深い作業である。4WD駆動系性能を他の4WD駆動系よりも抜きんでるための努力であり、達成したときの喜びは果てしない。苦労しようが無駄な努力になろうが、『開発』を止められない理由である。
息抜きと実益も兼ねて…何をするか?
『4WDを完璧にチューニングしたとしても、一定条件の模型路上で走行した
制御セッティングである』
エンドユーザーが気持ちよく運転してくれるには、評価路面以外の一般道で
『開発陣が思ったような性能をどんな環境でも維持しているのか?』
を確認するステップが必要である。
と言う訳で、休日、『試験路外で性能評価』をするため、試験場外に持ち出した。 朝、ホテルから移動車で試験場へ行き、試験車と2台で一般道の評価スタート。 当方は、移動車を運転し先導する。行先は、『層雲峡』である。

所外走行のため試験車を準備しているところ
『神々が遊ぶ庭』は、牙をむいて我らを迎えた…
アイヌ民族が『カムインミンタラ』(神々の遊ぶ庭)と称される雄大で厳しい大自然が続く『層雲峡』。
試験場を出発したときは、青空で気持ちの良いトリップになる予感がした。
しかし、予想は外れ、層雲峡に向かう整備された幅広い川沿いの道路に入ると、周りは乳白色で吹雪となってきた。左側のワイヤーガードレールを目印に前進していたが、そのガードレールも見えなくなった。自分に位置を知るために、目を凝らして、前方を凝視する。
フロントガラスに向かってくる無数の雪粒に視線が吸い込まれていき、身体が宙に浮いた気分になる。
『これが、雪女に魅入られた哀れな獲物の姿なのか~』
分かった気がした。でも、自分が道路上の安全な箇所を走っているのか、危険なのか、分からない。アクセルを踏む右足に『アクセルを緩めろ』と指示が出る。片や、『緩めるな』と反発する。後続の試験車に無線で連絡。乳白色の雲の中で、ハザードを点けて車を停車した。追突の恐れは無く安心。しばらくの間、ガラスに当たる雪粒の音と風。

ホワイトアウトが近づく
やがて、フロントガラスの右上に青空が僅かに見え、広がり、青空が広がっていった。
目の前の乳白色のベールも薄くなっていき、遠く右手に車が見えた。 なんと、自衛隊車両群であった。
『ホワイトアウトは、とてつもなく怖い。危険である。運悪く、遭遇したら、神に祈るしかない』
良い経験をしたのかもしれない。 その後、層雲峡温泉氷瀑祭りの準備を見ながら、次の目的地へ移動した。
